こんなに面白い!小学校のDC実践(2022年9月15日 DCオンラインゼミから)

毎月1回、ゲストとDC研究会のメンバーが語り合う「DCオンラインゼミ」。今回は2022年9月に開催された、第4回オンラインゼミから、小学校におけるDC教育の実践事例を3名の先生にお話しいただいた内容を要約してお届けします。

登壇されたのは、軽井沢風越学園教諭 有山裕美子先生, 軽井沢風越学園教諭 山﨑恭平先生, 高森北小学校・高森町子ども読書支援センター司書 宮澤優子先生の3名(いずれもご所属は登壇時当時)。

高森北小学校・高森町子ども読書支援センター司書 宮澤優子先生からは、デジタル・シティズンシップ教育を学校に普及させるために司書教員として、週に1回ある図書館を使った国語の授業を効果的に使った連続的な指導の機会を創出した。

軽井沢風越学園教諭 山﨑恭平先生からは、同校がコロナ禍の中から出発したことから初期段階から端末の活用が比較的浸透していたことを受け、1,2年生は思いっきり外で遊ぶことを大事にし、3年生から9年生(小中一貫カリキュラムなので中学校3年生=9年生)の中で、デジタル・シティズンシップを定期的に学べるカリキュラムを構成したことが紹介された。

軽井沢風越学園教諭 有山裕美子先生からは、具体的に年9回のデジタル・シティズンシップ教育で指導した内容を報告し、どのような教材を使い、大切にしたいポイントは何であったか、実際に実践をしてみて感じたことなどが報告された。

今後のDCオンラインゼミを受講されたい方は、研究会のイベント予約サイト(無料)であるPeatixをぜひフォローください。

3名の講師の皆さんと、その後のJDICE理事メンバーとのディスカションから浮かび上がってきた「小学校にデジタル・シティズンシップ教育を根付かせるための3つのポイント」は以下のようになりました。

1. デジタル・シティズンシップ教育の目的の共有と必要となる環境の整備

デジタル・シティズンシップ教育を小学校で浸透させるためには、まずDC教育の目的を明確にし、学びの環境を整備することが重要ということが、高森北小学校、軽井沢風越学園の両方に共通する要素となっていました。DC教育は単にICTスキルの向上を図ることではなく、子どもたちが責任を持ってデジタル技術を活用し、自立した判断ができるようになることを目指すものですから、学校全体での「学びの基盤」として位置付けることが求められます。このため、教科横断的にデジタル・シティズンシップを組み込み、図書館やICT担当教員がリーダーシップを発揮して、各教科の教員と協力しながら推進する体制を作ることが重要です。実際、司書教諭の宮澤先生は、国語科とコラボしてある程度連続的な時間を作り出し、先生方にDC教育の必要性を認識してもらった上で、自身と同じようなことができる先生をどう増やしていくか、という取り組みを紹介されていました。

2. DC教育教材の活用と指導者の育成

2点目として「教師の理解と実践力を高めるための支援」が重要なポイントとして挙げられました。各学校では、すぐに活用できる教材が提供されているものの、教員からはどうしても難しそう、自分にできるのか、準備時間が確保できるのか、といった不安や及び腰になるような声が聞こえてきます。このため、両校が共通して行った取り組みとして、教員向けにDC教育の理解を促進するためのワークショップを行ったり、学校内のサポート体制を構築し、教材の実際の使い方や授業での展開方法を共有していました。また、児童に対しても教材の内容をわかりやすく説明することで「自らの生活の中で実践する」ように促すこと、つまり児童の行動変容を促す働きかけの重要性が確認されました。また、教材についてはそのまま使うには学年によっては難しいケースもあるので、簡略化をしたり、公開されているSTEAMライブラリーにある映像などの視覚的な導入を行うことも効果的で、教員の負担軽減をしつつ、DC教育の効果を最大化するような取り組みが紹介されました。

3. 家庭との連携と”文化”への昇華

最後に、デジタル・シティズンシップ教育を学校全体の文化として根付かせるには、2点目の「行動変容」と地続きの話にもなるのですが、「家庭との連携」が非常に重要であることが示唆されています。保護者向けの講演会や情報提供を行い、デジタル技術の適切な使い方についての理解を深めてもらうことで、家庭でも一貫した指導が可能となります。もともと、DC教育には子どもたちが家庭内でのメディア利用について話し合う時間を持つことを促すなど、いくつかの問いかけを行なっており、ワークシートには保護者からの意見をもらうように求めるような部分もあります。このような形で小さなところから家庭の協力を得て、家庭でも少しずつ、子供たちが実践したり、それを保護者が確認できる環境を整えりすることが大切であることが示されました。さらに、各学校では教職員の異動に影響されないよう、教育の指針や教材の利用方法を文書化し、学校全体の共有財産とすることで、持続可能な教育の実践が可能となります。いずれも家庭内、学校内の「文化」になれば、自然と持続できる仕組みになるでしょう。

このように、デジタル・シティズンシップ教育を小学校で浸透させるためには、教育の目的と必要な環境の整備、DC教育が行える指導者の育成、家庭との連携という三つの要素が鍵となります。これにより、子どもたちが自律的にデジタル社会での生活を築けるよう、学校と家庭が一体となって取り組むことが求められます。