市民教育とメディアリテラシー:荻上チキさん(2022年10月21日 第5回DCオンラインゼミから)

毎月1回、ゲストとDC研究会のメンバーが語り合う「DCオンラインゼミ」。今回は2022年10月に特別ゲストとして荻上チキさんをお招きし、「市民教育とメディアリテラシー」というタイトルで講演をいただきました。

特別講演ですのでこちらの記事ではあまり具体的な内容をお書きできないのですが、非常に示唆的なお話を多数いただいたので、今後、アーカイブを有償で配信することも検討しております。以下の概要を読んで興味が出てきたという方は、JDiCE事務局までご相談ください。

今後のDCオンラインゼミを受講されたい方は、研究会のイベント予約サイト(無料)であるPeatixをぜひフォローください。


今回のオンラインゼミは、荻上さんと理事メンバーとの会話もさまざまな方向に発展し、予定を延長して多岐にわたる話題が議論されました。ポイントは以下では語り尽くせないのですが、まとめるとしたら以下のような3つの論点となります。

1: メディアリテラシーの現状

荻上さんは冒頭、「メディアリテラシー教育は、情報を批判的に捉える力を育むだけではなく、メディアを通じて社会的な行動を喚起する役割を担う」と説明し、教育に携わる人たちの子どもたちの情報への向き合い方についてさまざまな立場で試行錯誤をしている様子が伺えました。特にメディアリテラシーの捉え方を「情報を批判的に理解し、さらに行動に移す力」と定義し、(もともとDC教育の中にメディアリテラシー教育が含まれるのである意味当然ではありますが)その考え方がデジタルシティズンシップ教育の中でも同様に重要であることが理事メンバーにとっても改めて気づきになりました。その中で、特に皆さんが重要だと捉えたのが

「学校に限らずいろんなところで、やっぱり世の中ダメ出しは多いんだけど、もっとポジ出ししていこうよと、ポジティブなところをもっと前に出していこう」(荻上チキさん)

という部分。理事メンバーからも、デジタル時代における情報リテラシー教育の中でも「デジタルネガティブな視点からの脱却と、ポジティブな価値観を育む指導がもっと必要」という意見が出ていました。

2: いじめ問題とアップスタンダー教育

議論の中盤では、いじめ問題に焦点が当てられました。荻上さんは、2012年からNPO活動を通じていじめ問題に取り組んできた経験を踏まえ、大津のいじめ自殺事件をきっかけに、いじめ問題に取り組む必要性を強く感じたと語り、いじめ対策の知識が手に入るウェブサイトを提供したり、行政、メディア、政治家、教員、保護者など様々なアクターに情報を届けることに努めてきたそうです。

これはDCにおいても重要な概念である「アップスタンダー(傍観者ではなく、行動者であれ)」をまさに具現化した取り組みですが、教員たちが「行動することの意義を学ぶ場を提供する」という視点を持って指導を行うことがいじめ問題に対する子どもたち、さらには先生たちの意識が変わっていく(変えていく)第一歩として重要と言えるでしょう。

3: デジタル時代の社会的責任

今回の荻上さんの公演テーマには「メディアリテラシー」が含まれますが、この点についてデジタル時代におけるメディアリテラシー教育にはある意味において限界を感じている部分があるという議論も出ました。荻上さんは「デジタル時代においては、ネットリテラシーの技術的側面だけでなく、社会的な倫理観や思考の質が求められる」とした上で、たておばインターネットやSNS上でのヘイトスピーチやフェイクニュースの問題に対し、教育者がどのように向き合うべきかを理事メンバーに問いかける場面もありました。

議論の締めくくりに荻上さんは、メディアリテラシー教育は情報の批判的な読み解きにとどまらず、社会的な倫理を学ぶためのものでもあると指摘し、学校でのリテラシー教育においては、技術的な知識だけでなく、「何が正しいのかを判断する力を育てることが重要」とも主張されました。

おそらく上記の内容についてもっと知りたい・・・という方も多いと思いますが、今回はいったんこのような形でまとめたいと思います。アーカイブでぜひお話を聞きたい、という方は、JDiCE事務局までご相談ください。