毎月1回、ゲストとDC研究会のメンバーが語り合う「DCオンラインゼミ」。今回は2022年11月に特別ゲストとしてジャーナリストの津田大介さんをお招きし、「社会の不寛容とメディア」というタイトルで講演をいただきました。
特別講演ですのでこちらの記事ではあまり具体的な内容をお書きできないのですが、前回の荻上チキさんの回と同様、理事メンバーも思わず唸るようなお話をいただいたので、今後、アーカイブを有償で配信することも検討しております。以下の概要を読んで興味が出てきたという方は、JDiCE事務局までご相談ください。
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津田大介さんは、メディア環境と情報技術が社会に与える影響に対する深い考察を提供してくださいました。特に今回のテーマである「不寛容」に打ち勝つための方策として、やはり教育が果たす役割の重要性は大きいと、強調されています。
1: メディアと社会における「不寛容」の拡大
津田大介さんは、現代の日本社会における「不寛容」が拡大していることを述べ、特にメディアとSNSがその増幅に関わっていると指摘しました。津田さんは、インターネットやSNSが普及する以前、人々が意見を交わす機会は限られており、異なる立場の人々が衝突する場面は少なかったとところが、現代のSNSでは誰でも発信できる環境が整い、互いに異なる意見が対立する機会が増加しました。
「SNSでは、かつての匿名掲示板的なノリが拡散し、不特定多数が意見をぶつけ合う場になっています。これが社会の分断を加速させ、個人が敵対するような不寛容な空気を生み出しているのです。」(津田さん)
津田さんは、2009年頃から始まったインターネットと政治の関係性が、特にツイッターなどのプラットフォームを通じて変化していく過程を観察して来られました。当初、ネットは民主主義を促進する可能性を持つと期待されましたが、現在では逆に、情報が偏り、不寛容が生まれる場ともなっています。
2: 情報環境の変化とメディアの責任
前述の通り、ソーシャルメディアの普及は日本に限らず、世界中で情報環境に大きな変化をもたらしたのですが、その中でメディアが果たすべき役割についても指摘がありました。2000年代初頭のツイッターは、気軽な情報交換の場と見られており、フロー型の情報が主でしたが、現在は拡散されやすい仕様へと変化し、炎上や対立が顕在化しています。津田さんは「メディアの影響力がテレビからインターネットに移ったことは、広告費の変動からも見て取れます。広告収入がテレビを抜き、ソーシャルメディアへとシフトしたことが、情報発信の内容や伝わり方にも大きな影響を及ぼしています」という観点も示されました。
また、炎上や対立につながったツイッターのリプライ機能やコメント表示の仕様変更により、投稿に対する反応が可視化されたことが、不寛容を煽る結果になったと分析。最近では誤情報や感情的な発言が収益を生む仕組みが、不寛容の空気をさらに増幅させていると指摘しました。
3: 不寛容社会への対策と教育の可能性
そこで津田さんは、不寛容の拡大に対処するために、社会全体で教育と啓発を進める必要があることを指摘。特に教育の現場において、SNSが持つ情報の偏りや、不寛容な空気の危険性について学ぶ機会を設けるべきだと提案しました。また、フィルターバブルやエコーチャンバー現象が、ユーザーの視野を狭め、偏った意見に影響されやすくなる点を強調しました。
「ネット社会では、特定の価値観や思想がフィルターバブルの中で強化されやすく、その影響で極端な意見が拡散する傾向にあります。これを防ぐために、若い世代には、多様な意見に触れ、自らの判断力を養う教育が必要です。」(津田さん)
津田さんは、不寛容な社会を作らないためには、匿名性の制限や情報の質の管理、そして責任ある発信者を増やすことが重要だと述べ、特に教育現場での啓発活動が不可欠であると締めくくりました。