日本におけるインティマシーコーディネータ(2025年2月20日 DCオンラインゼミより)

毎月1回、ゲストとDC研究会のメンバーが語り合う「DCオンラインゼミ」。今回はゲストに浅田智穂さんをお招きします。

2020年に撮影されたNetflix映画『彼女』に、日本で初めてインティマシーコーディネーターが導入されました。それから4年半が経ちましたが、インティマシーコーディネーターは日本の映像業界に何か変化をもたらしたのでしょうか。役割や必要性、起用のメリット、需要など、現在の日本におけるインティマシーコーディネーターについてお話しいたします。

今後、動画のアーカイブを有償で配信することも検討しております。以下の概要を読んで興味が出てきたという方は、JDiCE事務局までご相談ください。

今後のDCオンラインゼミを受講されたい方は、研究会のイベント予約サイト(無料)であるPeatixをぜひフォローください。


インティマシーコーディネーターとは何か

ブランケット株式会社代表取締役社長であり、日本でインティマシーコーディネーターとして活動する浅田智穂氏から、まずは「インティマシーコーディネーター」とは何か、についてご紹介いただきました。これは、映像作品においてヌードや性的描写を伴うシーン(インティマシーシーン)で俳優の身体的・精神的安全を守りつつ、監督の演出意図を最大限実現する調整役です。浅田氏は米国の大学で舞台照明を学び、日本で通訳を経てこの職業に出会い、現在に至ります。この職業が広まった背景には、アメリカでのMeToo運動があり、日本ではまだ普及が進んでいないため、俳優が同意のないまま撮影される問題が存在しています。

インティマシーシーンの撮影における課題と解決策

日本の映像業界では明確なルールがなく、俳優は撮影当日まで何を要求されるか分からないという問題があります。そこで、インティマシーコーディネーターが事前に俳優とコミュニケーションを取り、シーン内容や露出範囲、接触の許容範囲などについて同意を得ることが重要です。また、撮影時には「クローズドセット」(最少人数での撮影)や適切な保護アイテムの使用、性的な描写があるシーンでは前貼りなどの対策を徹底することが推奨されています。これにより、俳優の不安を取り除き、安心安全な環境で良い演技を引き出せるようにしています。

登壇者同士のディスカッションから見える社会課題と教育への応用

ディスカッションでは、インティマシーコーディネーターが映画やテレビ業界だけでなく、教育現場など社会全体にも通じる課題を扱っているという認識が共有されました。特に、監督など力を持つ立場の人がその権力を誤って行使しないように対等なコミュニケーションを構築することが重要だと指摘されました。さらに、学校教育の場でも、児童・生徒の同意や意思を尊重するアプローチが必要であり、デジタルシチズンシップ教育の一環として取り入れる可能性も話題に上がりました。また、男女間やLGBTQ+に関連する問題にも触れ、誰もが安心して働ける環境作りが重要であること、インティマシーコーディネーターという職業が多くの分野で必要になるという共通認識が示されました。