民主主義の担い手の育成と情報-新聞とSNSの現在- (2025年1月10日 DCオンラインゼミより)

毎月1回、ゲストとDC研究会のメンバーが語り合う「DCオンラインゼミ」。今回はゲストに尾高泉さん(日本NIE学会常任理事)をお招きしました。

「新聞」と「教育」はともに良き市民を育てる関係にあると信じ、NIE(Newspaper in Education)や新聞博物館教育事業などをしてきました。「情報」「ニュース」「新聞」の違いが明確だったはずが、新聞購読者は激減し、人々は「ニュース」自体から離れ、「真偽ないままで大量に瞬時に拡散するSNS情報」が、民主主義に直接影響を及ぼす時代になりました。この状況にどう向き合うべきか、尾高さんにお話をいただきました。

今後、動画のアーカイブを有償で配信することも検討しております。以下の概要を読んで興味が出てきたという方は、JDiCE事務局までご相談ください。

今後のDCオンラインゼミを受講されたい方は、研究会のイベント予約サイト(無料)であるPeatixをぜひフォローください。


メディアリテラシーと民主主義の関係

冒頭、尾高氏は、メディアリテラシーの重要性と民主主義との深い関連性を強調されました。小高氏は、ご自身の経験を踏まえ、新聞業界が直面する課題や、情報の信頼性が民主主義に与える影響について説明。特に、SNSやデジタルメディアの普及により情報の総量が爆発的に増加した結果、信頼できる情報を見極める能力(リテラシー)が一層重要になったことを指摘しました。加えて、若い世代がニュースから離れる傾向が世界的に見られ、特に日本では顕著であることを示し、メディアリテラシー教育がこれまで以上に求められる状況にあると警鐘を鳴らしました。

メディアの変化と新聞の役割

尾高氏は、伝統的なマスメディアがデジタル時代に適応するために直面している課題についても言及しました。特に、新聞業界は自身がデジタル化を進めた結果として、ユーザーが無料で情報を得る習慣を形成し、有料コンテンツへの移行が困難になった経緯を解説しました。また、尾高氏は、新聞は単なる情報提供ではなく、社会的文脈や民主主義の基盤を提供する重要な役割を担っていることを強調し、定期的に紙媒体を読むことの重要性を改めて訴えました。さらに、メディア環境の変化が情報の分極化やフィルターバブルを生み出し、社会の分断を助長していると指摘しました。

ディスカッションから浮かび上がった課題と可能性

ゼミ後半のディスカッションでは、参加者からメディアリテラシー教育の現状やメディアの信頼性、そして若者が情報をどのように消費しているのかについて活発な意見交換が行われました。参加者は、若者がYouTubeやTikTokなどで手軽に情報に触れることができる反面、情報が偏ってしまう危険性も指摘しました。また、新聞やテレビなど伝統的なメディアが若者にとって身近ではない理由や、それを改善するための方策について議論が展開されました。特に、メディアリテラシー教育が「参加型」であり、ジャーナリズム的思考を育む内容であるべきだという意見や、伝統的メディア自身が新しいメディア環境に適応し変革を遂げる必要性について、多くの参加者が共感を示しました。