活動目的
本研究会は、世界的にもデファクトとなりつつある「デジタル・シティズンシップ教育」の日本国内への普及・定着を活動目的として2019年研究同人により結成されました。
デジタル・シティズンシップ教育は、欧米を中心に 2010 年代から普及したコンセプトです。それまでの利用制限・禁止を中心とした指導を転換し、テクノロジーのもつ積極的・社会的・道具的意義を認め、特に、オンライン・コミュニケーションによる安全な利用、シティズンシップとしての責任と尊重、自律と行動規範に基づく活用、多様性への寛容などが含まれ、子どもたちのデジタル生活を前提としたポジティブな教育のありかたとして注目されています。
学校での ICT 利活用が世界的にも大幅に遅延している我が国では、教職員の ICT スキルや知見の不足が大きな課題となっていることから、デジタル・シティズンシップの普及とあわせ、国内で利用可能な教材・学習材の整備が急務です。このため、本会では概念構築、実践活動、教材開発、授業支援をはじめとした活動を積極的に展開しています。
課題解決と社会貢献
本研究会の活動は、特に、初中等教育関係者とそのステークホルダ(児童生徒本人や保護者・家族、地域社会)と深く関わり、テクノロジー利用に関する児童生徒本人と教員に対する資質・能力を伸長させ、デジタル・コミュニケーションを中心とした積極的な対人関係や社会参加を促します。デジタル社会におけるテクノロジーの善き使い手を育てる活動全般は、我が国の公教育カリキュラム・制度、学校とステークホルダとの関係に大きな影響を与えると考えられます。
国からは教職員対象の ICT 支援員派遣について支援事業がある一方で、情報リテラシー育成上の重要なステークホルダである保護者・家族・地域社会に対する支援は希薄です。教職員の無用な負担増大を防ぐためにも、学校周辺への関係者への周知もまた重要な意義を持つでしょう。
活動方針
本研究会は以下4つの方針をもって活動を展開します。
① デジタル・シティズンシップ教育の概念構築
欧州評議会、米国ISTE等デジタル・シティズンシップ教育の概念は日々更新されており、これにキャッチアップする必要があります。初期は特に概念構築に関わる研究を進めます。
② 実践活動および事例紹介
デジタル・シティズンシップ教育は国内事例がほとんどなく、これらの知見蓄積が急務です。主に自治体教育委員会を中心とした、カリキュラム・マネジメントや教員研修のための枠組み整備を行うとともに、これらの事例を主にオンライン(ウェブサイト・SNS・ウェビナー等)手段を用いて、広く紹介します。
③ 教材開発・教材翻訳
②と関連して、デジタル・シティズンシップ教材の大半は海外のもので、日本の文化や学校教育にそのまま持ち込めない例も少なくありません。国内事情に合わせた海外教材の翻訳とローカライズ、国内版オリジナル教材の作成を進めます。特に、小学校高学年から高校生を対象とした教材では、児童生徒へのインタビューを中心に構成することで、配当学年の児童生徒に親近感が持てる内容を目指します。
④ 模擬授業の実施、授業支援
②③と関連して、作成した教材や指導案を用いて、現地小中高で講師が模擬授業を行ったり、現場教員の授業実施にサポートに入ったりする活動を通じて、教材へのフィードバックを得つつ使い勝手を向上させます。
⑤ 研究会事務局の運営
①~④に挙げたデジタル・シティズンシップ教育の普及のための、調査研究・教材開発・実践活動、および、広報活動の母体として研究会事務局を運営し、オンラインを主とした広報活動を展開します。